律令官名のサカン
律令体制が遠く崩れ去った近世初頭、突如として「左官」が壁塗り職の呼称として現われてくるのです。
このように見てくれば、壁塗り職と律令官名のサカンとの結びつきは全くなく、『大言海』に集約される一連の解釈は無理と結論せざるを得ない。
おそらくは谷川士清(『和訓栞』の著者)や喜多川守貞(『守貞漫稿』)がその豊富な古典に関する知識から発想し、発音の類似から「左官」の語源を官名の「厨」に求め、これを受けて大槻文彦(『大言海』)が敷術し、他に拠るべき論もないまま、現在、最も権威ある説として定着したものでしょう。
以上見たとおり、結局、従来の「左官」の語源に関する考証は首肯し難いものばかりです。